2020年の活動ふりかえり

どうも、稲田一声(17+1)です。

今年の8月ごろから近況報告的な記事を書こう書こうと思っていたのですが、ぼんやりしているうちに年の瀬になってしまいました。2020年の活動報告として、この一年で書いた小説+αをまとめたいと思います。

ちなみに2019年のまとめはツイッターでやってました。

 

①改名SF「変わったお名前ですね」

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SF創作講座第4期第7回課題「「取材」してお話を書こう。」に提出した短編です。13387字。

「わたし」こと嶺彩花(みね・あやか)は、七歳の誕生日に高熱を出して寝込んで以来、どうにも自分の名前がしっくりきません。しっくりこないどころか、長谷川留奈(はせがわ・るな)という名前こそがまさに自分の名前なのだと「目覚めて」いたのでした。どうして自分の名前なのに、自分で決めることができないのでしょうか?

梗概時点では「いま与えられている名前は自分を示すものではない」という嶺彩花の感覚(名自認?)がうまく伝えられず、実作を書くときに視点人物を変えたり原因らしきものを置いたりといろいろ工夫した覚えがあります。オチはもうちょっと別の形もありえたかも。同じ設定・別の登場人物でいろいろ書けそうな気もしますね。

②ファースト・コンタクトSF「きずひとつないせみのぬけがら」

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SF創作講座第4期第8回課題「ファースト・コンタクト(最初の接触)」に提出した短編です。8952字。

夏休みに父の実家へ連れてこられた前田和希(まえだ・かずき)は、散歩中に奇妙な蝉の抜け殻を発見します。普通なら背中側にあるはずの脱皮したときの破れ目がどこにも見当たらないのです。他にも似たような抜け殻はないかと探し歩いた先で、和希はワンピース姿の謎の美少年・幸村洋(こうむら・ひろし)と出会います。

ブログタイトル回収回です(ブログタイトル回収回って何?)。梗概講評時に「あまりにテッド・チャンすぎる」的なコメントをいただいたため、だいぶギミックが異なる実作を書きました。なので梗概・実作を読み比べてみると面白いかもしれません。実作を書くにあたって、もっとしっかり 参考文献を読んでおきたかったですね。反省です。

③味覚×視覚SF「光子美食学」

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SF創作講座第4期第9回課題「「20世紀までに作られた絵画・美術作品」のうちから一点を選び、文字で描写し、そのシーンをラストとして書いてください。」に提出した短編です。12041字。

飛び込み選手の志尾徹平(しび・てっぺい)は試合中の事故で後頭部を強打し、脳挫傷により両眼失明……ではなく、見たものをすべて「味」として感じ取るようになってしまいます。視覚がすっかり味覚に置き換わってしまった徹平は、再び飛び込み選手として復帰するために特殊なリハビリをはじめますが……。

これはすごく面白い課題でした。マグリットの『Les Valeurs Personnelles(個人的価値)』という絵を題材にして、視覚が味覚に置き換わった徹平の見ている(味わっている)世界と現実世界を重ね合わせて絵に描いたら『個人的価値』になる、という趣向を思いついたところまでは良かったのですが、梗概提出時ではラストシーンしか考えていなかったのであとから設定やストーリーを組み立てるのが大変でした。

④人魚SF「接ぎ木の人魚」(第3回阿波しらさぎ文学賞落選作)

(未発表のためリンクなし)

第3回阿波しらさぎ文学賞に応募した短編です。賞の詳細は検索していただければと思います。4762字。

あらすじのうち穏当なところだけ抜き出すと、鳴門海峡の人魚の女の子が、オンラインゲームで知り合って好きになった人間の女の子と急に会うことになってしまい、慌てて美郷の狸や吉野川の河童の協力を得て両脚を手に入れるというようなお話でした。

たしかコロナ禍によってSF創作講座のスケジュールが大幅に後ろ倒しになっていたころにいきおいで執筆したような覚えがあります。

⑤未来の学校SF「視点ABC」(第1回かぐやSFコンテスト選外佳作)

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第1回かぐやSFコンテスト(テーマ:未来の学校)に応募した短編です。賞の詳細は検索いただくか、上記のリンク先をご覧ください。作品も読めます。3952字。

VR高校にて、おしゃれ好きで毎日個性的なアバターで登校しているAさん、人間嫌いで他人を深海魚の姿に上書きしているBさん、クラス担任という権限を使って現実の自分そのものを強制的に生徒に見せるC先生、それぞれの視点が交錯するお話です。

こちらも、SF創作講座のスケジュールが大幅に後ろ倒しになっていたころに執筆した覚えがあります(↑の記事の冒頭にもそんなことが書いてありますね)。残念ながら最終候補には選ばれなかったものの、選外佳作として審査員の井上彼方さん・審査員長の橋本輝幸さんのHonorable Mentionリストに挙げていただきました。やったね!

⑥マンガ物理学SF「おねえちゃんのハンマースペース」(第4回ゲンロンSF新人賞東浩紀賞)

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SF創作講座第4期最終実作(課題・テーマなし)として提出した短編です。35207字。

マンガやアニメのキャラクターの背後にときおり存在する、本来所持できるはずのないアイテムを出し入れしている謎の空間を俗に「ハンマースペース」と呼びます。まるでその「ハンマースペース」のように背中に見えない穴があって自由にモノを出し入れできる姉と、その穴の中に入ったために取り返しのつかないことが起こってしまった弟が、それぞれ世界を揺るがします。

SF創作講座の最終実作はそのままゲンロンSF新人賞への応募作になるのですが、こちらは第4回ゲンロンSF新人賞東浩紀賞を受賞しました。やったね!

⑦ 掌編「迷彩された星」(ブンゲイファイトクラブオープンマイク)

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BFCオープンマイクに投稿した掌編です。上記リンクの「083」番目の作品です。

「外敵から身をまもるため小説に擬態する耳なし芳一」というコンセプトで書きました。きっと、これだけ物語が集まる場ならうまく紛れることができるに違いないと思ったのでしょう、この掌編は。

その後、池田くんは元気だとわかったので良かったです。

 

⑧頭部落下SF「塚原くんと同じ顔」(第2回ブンゲイファイトクラブ落選作)

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第2回ブンゲイファイトクラブに応募した作品です。賞の詳細は検索いただくか、上記のリンク先をご覧ください。作品も読めます。2145字。

ときどき謎のぶよぶよとした大きな頭が降ってくるようになって久しいとある町に、その頭とそっくりな転校生がやってくる話です。

結果は予選落ちでしたが、個人的に気に入っている作品です。ブンゲイファイトクラブは本戦以外でもさまざまな盛り上がりがあったので、ちょっとだけですがその一部に関われて面白かったです。

⑨マンガ物理学SFパート2「Deadlineの東」 

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第三十一回文学フリマ東京にて頒布した、「マンガ物理学」というテーマの小説アンソロジー『息 -Psyche- vol.5』収録作です。上記リンクで通販がはじまっています。18000字くらい?

マンガ物理学(Cartoon physics)とは、たとえば「キャラクターが崖の端を通り過ぎてしまっても、当人がそのことに気づくまでは一切重力が働かない」というような、マンガやアニメでよく見られる奇妙な物理現象のことです。「おねえちゃんのハンマースペース」のハンマースペースもマンガ物理学の一種です(正確には”アニメ”物理学らしいですが)。

 本作「Deadlineの東」は、上記のツイートで説明しているように、右から左へと進むコマ割りの物語と、左から右へと進むコマ割りの物語があって、それぞれが左右から近づいていって、ぶつかって、交差していく話です。やってみたいアイデアをそのまま形にしたらめちゃくちゃなことになってしまいました。また、笹帽子さん主宰のリフロー型電子書籍化不可能小説合同誌『紙魚はまだ死なない』へのリスペクトも込められています。

⑩触感ASMRSF「あなたがさわる水のりんかく」

booth.pm

こちらも第三十一回文学フリマ東京にて頒布されていました、ゲンロン大森望SF創作講座修了生有志によるSF文芸誌『Sci-Fire 2020』収録作です。上記リンクで通販がはじまっています。12000字くらい。

触感ASMRコンテンツを配信する白い立方体「乾タツミ」のお話です。ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)というのは、焚き火のパチパチ燃える音や囁き声、石鹸をナイフで薄く削る様子などといった特定のシチュエーションでの音声・映像がトリガーとなって、ある種の奇妙な心地よさが引き起こされる現象のことです。それの触覚版を(触覚デバイスを通して)乾タツミは配信していましたが、あることが理由で活動休止していたのでした。

たしか2018年のことだったと思いますが、文学フリマで自分のサークルとSCI-FIREのサークルが偶然お隣どうしで、名倉編さんがすぐそばで売り子をされていたりして、すごいすごいと友達と一緒にキャッキャしていた記憶があります。まさかその2年後にそこへ加わることになるとは……!

(番外)第5期ダールグレンラジオ始動

scifire.org

ダールグレンラジオというのは、「ゲンロン 大森望 SF創作講座」の提出作品について、非受講生が勝手に応援するポッドキャスト番組です。

SF創作講座第4期が終わって、さあこれからどうしたものかと思っていたところにお声がけいただき、同じくSF創作講座第4期を受講していた遠野よあけさんと一緒に第5期ダールグレンラジオのメインパーソナリティになりました。

今期のダールグレンラジオでは、SF創作講座第5期で毎月提出される梗概・実作を全部読み、ラジオで全作にコメントすることを目指しています。しかもおたよりコーナーまであります。そのため毎回めちゃくちゃ長時間の収録となり、とても大変ですが、今のところこの方針を変えるつもりはありません。よね?

上記のリンクでは、ゲストとしてSF作家のアマサワトキオさん・櫻木みわさんのお二人をお招きして、四人でおたよりを読んでいます。櫻木さん・アマサワさんの受講時の話や、創作についてのアドバイスなどいろいろお話していてSF創作講座受講生でない人でも面白いと思いますし、なにより収録時間が1時間10分とちょうどいい!ので、ぜひ聴いてみてください。

というわけで

2020年は、10作の掌編・短編小説を書きました。去年から続くSF創作講座をやりきるとともに、ダールグレンラジオという新たな挑戦にも取り組んだ一年でした。

みなさん、今年も一年お世話になりました。ありがとうございました。よいお年を!

塚原くんと同じ顔

 ブンゲイファイトクラブ2(BFC2)というイベントに応募した掌編です。結果は予選落ちでしたが、個人的に気に入っている作品なので、こちらで公開します。

 イベントの詳細と本選出場作は下記リンクからご覧ください。これからどんな戦いが繰り広げられるのでしょうか。僕もチェックしていきたいと思います。

note.com

 

塚原くんと同じ顔

 六年生のころ、塚原くんという子が転校してきた。
 教壇にひとり立つ塚原くんを前にして、誰かが小声で言った。「似てね?」何のことを言ってるかすぐに分かった。きっとみんなそうだったと思う。そのあとはもう塚原くんの顔ばかり気になってしまって、自己紹介の内容はぜんぶ、つーっと頭を通り過ぎていった。
 下校するころにはうわさが広まっていたのか、他の学年の子までが一目見ようと塚原くんのまわりに集まってきた。さっさと通学班に分かれて整列しないといけないのに体育館はぐちゃぐちゃだ。塚原くんはまだヘルメットがなくて、その日は先生の傘を借りる予定だったから、白ヘルの群れの中心で黒い頭が目立っていた。
「実際そうでもなくない?」「いや激似だって」「ランドセル変な色だったね」「知ってて転校してきたんかな」「ないでしょ」帰り道の話題もやっぱり塚原くんだ。本人がその場にいないせいか、みんな好き勝手に話している。こんな海沿いのへんぴな町にわざわざ引っ越してくるなんて変なのと僕も思ったけど、班長の僕はつねに列の先頭にいないといけないから、なかなか会話に入れない。
 そのとき潮風が強く吹いて、とっさに僕たちはその場でしゃがみこんだ。先生がいつも言っているとおりに。すこしして、前のほうでぼすんと音がした。頭が降ってきたのだ。
 ちょうど道がゆるい上り坂だったので、ぶよぶよとしたそれは小さく跳ねながらゆっくりとこちらに転がってきた。キャッチしようとしたら、持っていた班長旗が突き刺さってしまった。ビーチボールくらいある半透明のはげ頭。右目から班長旗が飛び出している。
「そっくりじゃん」後ろでカンちゃんの声がした。
 二年ほど前から、この町では、ときどき謎の大きな頭が空から降ってくるようになった。だいたい月に五、六個くらいで、風の強いくもりの日に降ってくることが多い。どれもみんな同じ顔で、にっこり微笑んでいるように見える。煮こごりみたいなぶよぶよの塊だから、当たってもたいして痛くない。ただし冬場は凍っていることもあるので要注意。はじめのうちは町じゅう大騒ぎだったしテレビの取材もたくさん来たけれど、今ではみんな慣れっこになっていた。
 おそらく海外のおもちゃが貨物船から大量に流れ出て、海上で発生する竜巻に巻き上げられてここまで飛んできているのではないか。そう、大学の先生が説明していた。でもそれは嘘だと思う。みんなごまかされている。本当は、あの頭は宇宙人からのメッセージなんだ。
 ひょっとして、塚原くんも宇宙人なんだろうか。
「なあなあ転校生、いいかげん正体教えてくれん?」
 掃除の時間、僕たちは塚原くんを渡り廊下に呼び出した。降頭対策で補強された屋根の下、ぐるりと取り囲む。クラスのリーダーであるカンちゃんが、人類を代表して丁重に問いかけた。「その頭も取れるん?」
 塚原くんは困ったように笑みを浮かべて、一言もしゃべらずにこちらをきょろきょろと見回すだけだった。
「なんか言えよ!」
 カンちゃんが足を一歩踏み出した。塚原くんを囲む人の輪がすこし崩れる。その隙間を突っ切るようにして、塚原くんが駆け抜けていった。「逃げた!」「捕まえろっ」校庭での追いかけっこがはじまった。
 追いかけて分かったのは、塚原くんはものすごく足が速いということだ。学校で一番速いかもしれない。すばしっこくてまったく捕まえられない。
 走っているうちに、どうして塚原くんを追いかけているのか僕は忘れてしまっていた。ただ、久しぶりに校庭を駆け回るのが楽しくて、むしょうに風が気持ちいい。
 だから反応が遅れた。
 突然の強い風にも、空から降ってくる頭にも。
 気づいたら、走っても間に合わないほど遠くのほうで、半透明の大きな頭が回転しながら落ちていた。その落下する先に向かって、塚原くんの黒い頭が近づいている。ヘルメットをしていない。「塚原うえぇ見ろ!」思わず僕は叫んでいた。
 塚原くんが驚いた表情で一瞬こっちを向く。それから空を見て、降ってくる頭を目で捉えたかと思うと、思いっ切りジャンプした。振り上がる右脚。ひっくりかえる身体。上履きの爪先が、ぶよぶよ頭の芯を打ち抜いた。
「オーバーヘッドキックだ!」
 正直、めちゃくちゃかっこよかった。
 聞き逃していたけれど、塚原くんは自己紹介でサッカーが得意だと言っていたのだ。
 それから僕たちは塚原くんとすっかり打ち解けて、よく一緒に遊ぶようになった。小学校を卒業してからも、中学、高校とずっと仲良しだった。不思議なことに、空から降ってくる頭はいつも同じ顔なのに、塚原くんに似ているとは全然思わなくなっていた。
 その謎が解けたのは、大学進学で上京したときのことだ。知り合いが誰もいないライングループにいきなり入ることになって、中がどういう空気なのかが分からず、無難な挨拶のあとに笑顔の絵文字をつけて送信した。大爆笑というほどではない、適度な微笑みだ。
 ああ、これだったんだと思い至った。塚原くんも最初はこれだった。
 このころには、これと同じ笑みを浮かべたぶよぶよの大きな頭が、地元だけではなく日本各地の、いや世界中のさまざまな町に降ってくるようになっていた。

 

わたしの暴力と破滅のアンソロジー

暴力と破滅のアンソロジーとは?

Twitterにて「暴力と破滅のアンソロジー」という文字列または「#暴力と破滅のアンソロジー」というハッシュタグで検索してみてください。なんとなく分かると思います。わたしもなんとなくでこの記事を書いています。ついでにAmazonで「暴力と破滅」と検索して、検索結果に現れた電子書籍を購入するのもよい考えだと思います。

 

わたしの暴力と破滅のアンソロジー

○「燃えろ看板娘」矢部嵩

和菓子屋の娘かしこは父の入院をきっかけに店を手伝うようになるが、なにもかもうまくいかず失敗続きで、やがて破滅する。勢いがあって楽しく、読むとなぜだか元気が出る。カクヨムで読める。

○「沖縄ァオオアン!!」ナクヤムパンリエッタ

旅行記マンガ。北海道好きの作者が「北の反対は南」という理由で沖縄に行き、下調べゼロのため破滅的な旅がはじまる。他の旅行記もハチャメチャで面白い。BOOTHで電子版が購入できる。

○「スクールアタック・シンドローム舞城王太郎

自宅のソファの上から離れられなくなって半年が経った父親と、学校襲撃計画をノートに記す15歳の息子。「暴力」から最初に連想したのはこれでした。短編集『スクールアタック・シンドローム』収録。

○「鳳梨娘」沙村広明

果汁と果肉に満たされた水槽で暮らす果実生産会社の娘エリセは、フルーツ以外のものを口にすることを一切禁じられていた。もっと暴力的で破滅的な作品もあるだろうけどこのくらいが好き。『幻想ギネコクラシー』第1巻収録。

○「万灯」米澤穂信

バングラデシュでの天然ガス事業を実現させるためには、開発拠点としてボイシャク村の協力が不可欠だったが、そこには排除しなければならない障害があった。倒叙ものはだいたい破滅。『満願』収録。

○「めまい」田中鈴木

幸太郎が幼馴染のてっちゃんの家に行くと、そこにはてっちゃんの両親の惨殺死体が。「いっしょに逃げてくれよ」とてっちゃんは幸太郎に言い、二人の逃避行がはじまる。単独で電子書籍が購入できる。

○「モータルコンバット」ケヴィン・ウィルソン(著)、芹澤恵(訳)

残虐な格闘ゲームモータルコンバット》が好きなオタク男子二人はいつも視聴覚機材室でクイズを出しあっていたが、ある日もののはずみでキスしてから関係が変わりはじめる。破滅しないでくれ。『地球の中心までトンネルを掘る』収録。

○「かわいい闇」マリー・ポムピュイ(作)、ファビアン・ヴェルマン(作)、ケラスコエット(画)、原正人(訳)

住処にしていた人間の少女が森で死んでしまったため、不意に過酷な自然へと放り出されることとなったかわいい小人たちの暴力と破滅。もとは大型本のバンド・デシネだけど、これは架空のアンソロジーなので無理やり入れる。

 

 

暴力と破滅の短編集 (V&R BOOKS)

暴力と破滅の短編集 (V&R BOOKS)

 


視点ABC(第一回かぐやSFコンテスト選外佳作)

 あれは2020年7月のこと。ゲンロンSF創作講座の最終実作が書けねえ~~~~~~と唸っていたら、いつのまにか第一回かぐやSFコンテストに応募していました。“未来の学校”をテーマにした、SFショートショートのコンテストです。最優秀作品は英語と中国語に翻訳してウェブ上に掲載されます。イラストもつくし副賞もあります。すごい。

 応募した「視点ABC」は、残念ながら最終候補には選ばれなかったものの、選外佳作として審査員の井上彼方さん・審査員長の橋本輝幸さんのHonorable Mentionリストに挙げていただきました(やったね!)。なので、こちらで作品を公開します。楽しんでいただけると幸いです。

 また、最終候補に選ばれて現在公開中の11作品も、他の選外佳作も(すべては読めていませんが)いろんなSFがあって面白かったので、そちらも読んでみてはいかがでしょうか。コンテストの最終結果は【8/15(土)】に発表されるとのことです。

virtualgorillaplus.com

virtualgorillaplus.com

 

視点ABC

 Aさんがこの学校を選んだ最大の理由は、その自由な校風にあった。日本の高校にしては校則が緩く、なんでも好きな格好ができるというのだ。どんな服装でもどんな髪型でもどんな爪の色でも、完全に個人の自由だと。

 おしゃれ好きのAさんは、入学するとすぐに日々のファッションを楽しむようになった。おこづかいをやりくりして、毎日気合いの入った自分らしさあふれる格好で登校した。金欠のときには、マンネリ感のない着回しを研究したり、友達とアイテムを交換したり、思い切って自作に挑戦してみたりと工夫を重ねた。いつだって手鏡を持ち歩いていて、つねに身だしなみに気を遣っていた。

 ところが入学してからしばらく経つと、自由な校風という評判はすこしばかり誇張されたものだとわかってきた。高校の授業にも慣れてきた初夏のこと、ものはためしに実世界換算で5メートルほどの身長になるアバターを素直に事前申請したらリジェクトされてしまったのだ。先生の説明によると、校舎のモデルがほぼ実寸に近いため、極端に大きなアバターだと天井や壁と干渉して身動きがとれなくなってしまうのだという。言われてみればもっともな話だ。制約は他にもあって、あまり計算量の大きいアバターでサーバに負荷を与えるなだの、スポンサーの競合他社となるブランドは非推奨だの、学校運営上の事情がいろいろとあるようだった。要するに「なんでも好きな格好ができる」というわけではなかった。

 めげずにAさんは自分の見た目を追求しつづけた。先日はシルバーグレーのシャツを着て黒髪を後ろで束ね、ついでにカイゼル髭を生やしてみた。その前は、緑のドレスとゆるくパーマをあてた赤髪でどこぞの人魚姫っぽさを演出してみた。詰襟の学生服に坊主頭でストイックに仕上げた日もある。後頭部を撫でたときの触感のフィードバックがクラスメイトに好評だった。友達から自分の格好を褒められることはあまりなく、むしろ驚かれたり呆れられることのほうが多かったけれど、それでも周りから注目されるだけでAさんにとっては大満足だった。

 そんな目立ちたがり屋のAさんだったから、クラスでひとりだけ、自分にまったく興味を示さない子がいるのにも早くから気づいていた。興味がないというか、まったくこちらが見えていないという感じ。いや、自分だけではなく、他のどの生徒のこともまるで見えていないような。

 呼びかければ返事はあるから、どうやらミュートされてるわけではなさそうだけど。

 それでも最近、Aさんはその子のことが気になってしかたがないのであった。

 

 Bさんは実際のところ、クラスメイトAさんの個性的な格好どころかAさんの存在自体が見えていなかった。また、Aさんだけではなく、他の生徒の姿も誰一人として捉えてはいなかった。

 Bさんの視界では、学校は海に沈んだ廃墟になっていた。藻類が揺れ、深海魚がときおり通り過ぎる。水母のような光源がところどころに浮いており、教室前方のスクリーンだけはよく見える。教室には金属製の潜水服を身につけた自分ひとりだけが存在し、他には誰もいない。このように、深い青に包まれた教室にひとりぼっちでいると、勉強にすこぶる集中できるのだ。

 この排他的な視界は、Bさんが常用している潜水服アバターの、大きなヘルメットの窓に映し出されている。あくまでそういう映像が投影されるデザインの服装であり、けっして他の生徒のアバターを上書きして存在を抹消しているわけではない。そのようにBさんは事前申請時に主張しており、その主張は今のところ受け入れられている。潜水服アバターはBさん本人にしか見えず、周りからは当たり障りのない表情をした当たり障りのない服装のアバターが表示されている。

 音声情報も徹底している。誰かから話しかけられたとき、その声は水中を漂う深海魚から発せられたかのように変換されている。これも勉強に集中するための雰囲気づくりの一環でありけっしてクラスメイトの姿を深海魚に変えているわけではない位置情報が全然違っているし実際の人間とオブジェクトとが一対一で対応しているわけでもないじゃないかそういうデザインの服なんだこれは人権侵害ではないとBさんは入学以来ずっと主張している。

 だからBさんはクラスメイトAさんの個性的なアバターを一度も見たことがない。深海魚たちの話によるとどうやら日替わりで異なるファッションを楽しんでいるらしいが、Bさんにはその楽しさがまったく理解できない。そもそもAさんとも、誰ともつるみたくなんかない。

 そんな堅物のBさんにとって、悩みの種となっている人物がひとりいる。それは担任の先生だ。自分が構築した深海の教室で、なぜかその先生だけはそのままの姿で視界に映ってしまうのだ。周りの風景から浮いているどころか、ヘルメットを突き抜け、重畳遠近法をガン無視して視界に入ってくる。声も深海魚にならない。邪魔すぎる。

 おそらく教師のほうがサーバ上の権限が強いからそのように表示されているのだと思われるが、それにしてもどうしてこの先生だけ。これじゃあちっとも集中できない。

 担任の先生が受けもつ数学の授業中、Bさんはずっと先生を睨みつづけている。敵意をふんだんに込めた視線がヘルメットの内側から照射される。しかし外側から見たBさんのアバターは、相変わらず当たり障りのない表情をしている。

 

 C先生が教師になってから実に四十年が経ったが、近頃の教育環境にはとてもじゃないがついていけないというのが正直な思いだった。

 オンラインには賛成だ。バーチャル空間での授業もまあいいだろう。与えられた見た目による束縛から解放されることも重要だと思う。だが、教師が生徒の顔を見られないというのはどうなのか。それはものを教えるうえで非常に問題があるのではないか。アバター同士で見せたい姿だけを相手に見せて、はたしてそれで本当にコミュニケーションできていると言えるのか。

 それとも、これももう古い考え方なのか。みんなコミュニケーションの新様式に適応できていて、自分のような老人だけが取り残されているのだろうか。そう、C先生は毎晩悩んでいる。

 とはいえC先生にできることは、せいぜいクラス担任という権限を存分に利用することくらいだ。

 まず、自分のアバターは現実の自分そのものに極限まで近づけ、全身の動き、表情、視線、その他非言語的なメッセージの何もかもを正確にそのまま出力するようにする。すくなくとも自分の放つメッセージは現実のそれと同等にすることで、ジェスチャーや目配せなどの表現がこぼれおちないようにする。

 また、生徒たちから出力されるメッセージもできるかぎり取りこぼさないようにする。素顔の映ったカメラ映像などはプライバシーの観点から取得できないし取得したいとも思わないが、担任権限の範囲内にある各種トラッキング情報、事前登録されたアバターや持ち込みオブジェクトの特徴、アンケートや授業態度に基づく興味嗜好、過去の発言、成績データなどを統合して、それらを基にした分析結果を生徒たちのアバター付近に数値や文字列として適宜付加する。すこしでも生徒たちのことをより深く理解できるように。

 そんな教育熱心なC先生なので、数学の授業が終わったあとの休み時間も観察を欠かさない。周囲とほとんど交流しようとしないBさんも気になるところではあったが、今まさにマークしているのはAさんのほうであった。細かく左右に揺れる首の様子から察するに、どうも何やら良からぬことを企んでいるようなのだ。その挙動不審な動きは、一年の夏のはじめに巨大なアバターを申請してきたときのそれと一致していた。右腕が背後に回されているのもあやしい。

 まさかあいつ、今度は無許可で何か持ち込んだか。

 Aさんは首をひょこひょこさせながらBさんの座っている席に近づいていく。

 

 Aさんは、ただBさんと仲良くしたかっただけだったという。持ち込んだオブジェクトもいつもの手鏡で、特に申請が必要というほどでもない。Aさんは、当たり障りのない顔をしたBさんに、アバターの一時的な上書きすなわちメイクを教えてあげようと考えていた。ただ、Bさんを驚かせようと無言で顔の前に手鏡をかざしたのがまずかった。

 Bさんは、C先生から視線を外して目を休ませていたところ、いきなりヘルメットを突き抜けて手鏡が現れたのでひどく混乱した。自分の険悪な顔を目の当たりにしたからではない。ヘルメットの内部など顔も何も設定していなかった。そしてそれが問題だった。手鏡がその鏡面に映すものは未定義で、Bさんの視界にエラーが生じた。

 C先生は、Bさん付近の数値がのきなみ異常値を示すのを見て、慌ててBさんのもとへと駆け寄った。

 Aさんは自分の服装が震えていることに気づいた。自分が震えているのではない、服だけが震えているのだ。だんだん布地が海藻のように見えてきた。急に大声を出してやってきたC先生のほうを見ると、カイゼル髭が生えていた。よくわからない数字が表示されていた。

 Bさんの視界では、C先生はその手鏡を突き抜けてBさんの目の前に表示されていた。変な髭が生えている。何も映さない手鏡よりも手前に表示されるC先生は、はたして鏡に映るべきだろうか。エラーにエラーが重なっていた。ヘルメットの窓が壊れて水が流れ込んできているような気がした。

 C先生は教室中の数値が上昇しつづけていることに気づいた。文字列もグリッチがかかって何ひとつ正しく表示されない。周囲が青みがかってきている。あれは人魚姫か? 光がまぶしくてよく見えない。負荷がかかりすぎている。

 そして、サーバが落ちる直前の一瞬。

 三人ははじめて同じ光景を見た。

 

 

SF創作講座第4期第3回課題の梗概感想メモ(その2)

school.genron.co.jp

 

すでに締め切りまで一週間を切っていますが……遅くなってしまいすみません……みなさん進捗はいかがでしょうか……。

繰り返しになりますが、単なる読み落としや思い込み、勝手な実作への要望などが多々あるだろうと思います。また、講座を受ける前に書いた感想もあれば講座後に書いた感想もあります。作品によってころころ主張が変わっているかもしれません。すみません。

この記事では梗概38作中の後半19作(渡邉さん~遠野さん)について感想を書いています。

 

渡邉清文『プロフェッサー楓とアレクサンドロスの末裔』

  • 感想交換会でうかがったこの作品のメタ的構造がとても面白く、ぜひ実作で読んでみたいと思いました(梗概でうまく伝わっていないのが惜しいです)
  • と、感想交換会のときは思っていたものの、講座でのやりとりを考えると、実作でメタ的構造を採用したほうがいいのかどうなのか……、なんにせよ実作が楽しみです!

 

木玉文亀『ヒーローの見えざる手』

  • 地球上のあちこちで同時多発的に異常事態が起こるところが、スケールが大きくて楽しいです
  • プランクトンが改変されるのなら人間(や他の生き物)も改変された方が一貫性があっていいのかなと思いました(人間だけのために環境改変しているのではありませんよね?)

 

黒田渚『オール・ワールド・イズ・ア・ヒーロー』

  • 外の世界で具体的に何が起こったのか、完全には明らかにならないところが好きです。不気味で居心地が悪く、独自の魅力を放っていると思います
  • 劇中劇のようなかたちで、だんだんと不穏に変貌するストーリーを読んでみたいです

 

九きゅあ『選択子ノ宮』

  • なんらかの決断をしない限り究極の選択が延々と続く、というシチュエーションはなかなかに恐ろしいです。テンポよくストーリーを収めることができれば、極限状況の怖さと面白さがぎゅっと詰まったスリラーになるのではないでしょうか
  • 一方で、人間関係がちゃんと描かれていないと、読者がトハンの迷いに寄り添うことができず置いてけぼりになっちゃうだろうな……とも思いました

 

宇露倫『ロータス・ブレイヴ』

  • かっこいい。主人公ももちろんかっこいいですし、国際災害救助機構と〈灯街〉の設定、テック災害というシチュエーション、制服を結合させたバリケードという解決法など、ひとつひとつがバチっと決まっていると思いました
  • ただ、新米隊員という設定だったので、「主人公の未熟さが原因で何かミスを犯してしまうが、それをきっかけに成長する」というものを勝手に期待してしまいました

 

藍銅ツバメ『ペテン師モランと兎の星』

  • 講座で、梗概には書かれていない設定がすらすらと語られていくのを見て「うらやましい……」と思いました(僕の場合、梗概を書き終わった時点では、書かれていないところはほぼ無なので……)。確固たる世界観があるのが強いです
  • モランが実際に詭弁やトリックを駆使して人々を手玉にとるシーンを読んでみたいです

 

中野 伶理『ディスオリエント・エクスプレス』

  • アピール文を読んで本作品におけるヒーローというものが分かり、面白い着眼点だと思いました。苦い結末も物語全体の雰囲気に合ってていいですね……
  • この雰囲気なら時を超えるのに理屈はいらないと思うんですが、「午前零時に来る」というところには何か謂れがあると更にいいかな、と思いました

 

西宮四光『スタンド・アップ』

  • 突きつけられたナイフ(のおそらく刃の部分)をジェイが強く握るシーンは、さらっとした記述にもかかわらず凄みがありました。梗概ではあまり語られていないジェイの背景がこの1シーンに込められているようでした
  • 何も悪事を働いていない移民や何者かに暴行を受けている移民がいたとき、自警団は(ランパルトは)どうするのかが気になりました


泉遼平『赤いお父さん』

  • まず、タイトルが好きです。スーツの重さと着用者の筋力の関係も面白いし、そういうふうに冷静に観察している主人公の冷めた感じも面白かったです
  • 欲を言えば、終盤にもうひとひねり意外な展開がほしいなと思いました。いじめ問題が特に解決していないのもすこし気になります

 

安斉樹『生きている方が先』

  • これも面白いタイトルだなと思いました。ストーリーも、オーソドックスな幽霊話かと思ったら、突然現れた少女を「自分達に縁深い人」だとすぐ確信するところなど、主人公が自分の知らないルールや価値基準で暮らしている感じがして面白いです
  • 突然現れたのがひとりの少女だったというのは、死んだ父親や「竈三柱大神」や主人公がネットで調べた逸話などと少しちぐはぐになっている気がしました(いや、そのすっきりしなさが独特の余韻を生むのかもしれません)

 

藤田青土『パノプティコンの中心にいる僕』

  • 犯罪者を洗脳して善人に変える法案って時点で「それヴィラン側の所業でしょ」と言いたくなるブラック具合なのに、洗脳されても結局みんな個人の欲望に溺れているという救われない設定が良かったです
  • 梗概では各囚人の話にばかり興味が湧いてしまったので、主人公の物語もそれらに負けないぐらい強くしたほうがいいのかなと思いました

 

泡海陽宇『人類未踏の地、6分の一の世界。』

  • 実在の人物をモデルにヒーローを描くというのは盲点でした。いろいろとハードル高そうですが、もし大丈夫ならぜひとも挑戦してほしいです
  • できれば、梗概の時点で「もうひとつのストーリー」を具体的に示してほしかったです

 

宿禰『世代』

  • 梗概では生物の不思議な身体・性質・生態が幻想的な感じがしましたが、アピール文では詳細な設定の種明かしが面白く、二度楽しめました
  • ラストシーンでは、今ここでムクを食べないと絶対シンとリスは助からない、とムクが確信する理由または勢いがほしいなと思いました

 

松山徳子『彼女は決して名乗らない』

  • 人類の成り立ちについての創造神話的な語りからはじまり舞台となる島国の現状へと至るところが、世界がだんだん広がっていくような感じがして良かったです
  • その遠くまで広がっている世界観とくらべると、起こっている出来事がすこし小さすぎるのではないかとも思いました。また、「僅かな違和感を覚える」辺りの描写が意味深ですが、意図を読み切れませんでした……

 

東京ニトロ『FLIX!!』

  • 梗概時点で登場人物がいきいきとしていると思いました。ただ巻き込まれるのではなく、みんなはっきりした目的があって、きちんと行動しているからでしょうか。とにかく読んでて楽しかったです(ボールド体も真似したくなりました)
  • 外銀河連合にとって、灘くんを高さ3m(のロボット)にすることにどんなメリットがあったんだろうとも思いましたが、別にそこまでは気にならなかったです

 

一徳元就『バグイーター』

  • 第1段落〜第3段落あたりの、時語りの怒りが込められたような文体が臨場感たっぷりで良かったです。「焼けた鉄器の上を転がる水玉のような」というたとえもかっこいいです
  • ラストシーンで何が起こっているのか、梗概ではうまく読み取ることができませんでした。すみません……

 

宇部詠一『アーカーシャの遍歴騎士』

  • リベンジポルノを防ぐというヒーロー像に新しさを感じました。十一歳の少年がすでに自死していることなどが明かされて、はたして主人公の行動に意味はあったのか、と存在意義がゆらぐところも面白かったです
  • 憲治が最終的に美恵の画像を削除した理由は、序盤に書いてある「誰かの名誉を守るため」ではなく、謎の依頼人からの依頼を遂行するためでもなく、法律を守るためでした。ここから、なぜその法律を守らなければならないのかという方向に踏み込むのも面白そうです


揚羽はな『赤い大地に降る雪は』

  • ミステリ的な謎の提示や3分という時間制限にわくわくしました。マイケル・ベルダーが地球にいられなくなった経緯には(アピール文にもありましたが)現実の出来事が重なって感じられ、説得力があるなと思いました
  • 「治療法を模索していたアリシアのおかげで、奇跡的に助かる」の部分については、実作では三分の壁を超えることができた理由が明確に書かれていたらいいなと思います

 

遠野よあけ『カンベイ未来事件』

  • 感想交換会や講座での話を聴いて、この話でいう正義は「正義感」のことだよね、と思っています。物語中の社会がどのようなものなのか、最終的にどういう社会に変わっていくのかに興味がわきました
  • 梗概ではところどころ分からないところもあったのですが、感想交換会で大丈夫って言っていたからきっと大丈夫なんだろうと思います

SF創作講座第4期第3回課題の梗概感想メモ(その1)

school.genron.co.jp

 

他の受講生の方々がブログやTwitterやnoteで感想を投稿しているのを見て、自分もやってみようと思いました。特に今回は講義後の懇親会に参加できなくて感想を直接話す機会がなさそうなので、文章に残しておこうかと……。

単なる読み落としや思い込み、勝手な実作への要望などが多々あるだろうと思います。すみません。

この記事では梗概38作中の前半19作(天王丸さん~村木さんまで)について感想を書いています。後半の感想はのちほど別記事で書こうと思います。

 

天王丸景虎『52ヘルツの虚鯨』

  • まず、表紙がかっこいい。実作で繰り広げられるであろうスケールの大きな戦闘描写(テッド・チャンの「理解」!)もワクワク度が高いです
  • 実作では、兄の心境の変化(過去に何かあり引きこもる→妹のピンチを救うために戦う→妹とのつながりを断つ、の流れなど)をもっと詳しく知りたいです

 

稲田一声『女の子から空が降ってくる』

  • 自作です
  • あとからどんどん瑕疵が見つかります

 

ひろきち『最後のコハダ』

  • 失った小指をエンガワの皮で補うというエピソードが凄まじくて好きです。このシーンだけ絵柄が違うぞ……! って感じです
  • 序盤に出てきた役所や流山組が終盤の展開に絡んでこないのは、ちょっとだけもったいないような気がしました

 

吾妻三郎太『傷を舐めあう幻』

  • これは、犬と猫は(たとえば青島の猫みたいに)何十匹もいるということなのだろう、と読みました。過疎地に残された犬と猫、ビジュアルで魅せるものがあります
  • 電脳空間から現実への干渉規制があるなか、電脳上の人々が捨てられた動物の面倒を見るという特区をどう設立するのか、そのからくりが知りたいです

 

今野あきひろ『おまえは犬のように吠えたのか?』

  • ヒーローは実在するし悪の結社と実際に戦っているけれど、その戦いが興行みたいになっている、という世界観だと読みました。興行関係なしに自分の意思だけで戦うラストシーンがアツいです
  • 7月の講座での新井先生の発言や8月ゲスト編集者の溝口さんのツイートによると、どうもゲストの方には梗概・実作の印刷物が送られているようです。動画はQRコード化したリンクを添えた方がいいのかもしれません(それで視聴してもらえるかは分かりませんが……)

 

藤琉『メリークリスマス』

  • サンタクロースという概念の善悪が裏返ったかのような設定が面白く、サンタによって第二日本が変貌していく様子をぜひ実作で読みたいと思いました
  • 贈与中毒とは、贈与を受けることに依存してしまうこと? それとも、贈与したくてたまらなくなってしまうこと? 前者の場合なら、買い物中毒などにネーミングを倣えば「受贈中毒」とかになるのかな……と思いました

 

甘木零『君のしっぽが僕を知ってる』

  • 学園ミステリだ! 失踪する生徒たち、幽霊騒動、人為的変異体の噂など、魅力的な謎が次々と出てきてわくわくしました。犯人の告白が全校放送で筒抜けになるよう仕組んでいたというのも「そうそうこれこれ!」って感じです
  • 真相については、梗概ではすこし言葉足らずだったかもしれません。わざわざ隠蔽しなくても普通に穏便に退学させてあげればいいのに……と思ってしまいました(見当違いのことを言っていたらすみません)

 

中倉大輔『フード・オブ・ワンダー』

  • 少年漫画みたいな躍動感あるキャラクターが目に浮かんで楽しかったです。これぞ王道という感じでした
  • なんだかちょっとマフィアがかわいそうで、リンがすべきだったのはマフィアを壊滅させることではなく、調理技術を活用して得た金で輸送車を弁償することだったのでは……という気もします(もっともっと極悪非道なマフィアの描写があればバランスがとれるかもしれません)

 

夢想真『それはシアワセではありません』

  • これは感想交換会でも話したのですが、人間の躰を乗っとるのに腑抜けにする必要がある集合体意識がサトミの躰を乗っとることができたのは、なんらかの理由でサトミがすでに腑抜けに近い状態だったからだという説が浮かびました
  • この説を採用すると、サトルが『シアワセ』を破壊して人々に欲望が戻ったとしてもサトミだけはひとり助からず腑抜けのままで、これはどう料理してもぐっとくるシチュエーションではないか! と勝手に盛り上がってしまいました

 

古川三叶『ハロー、アリス』

  • 僕も指先ひとつで群衆を自在に操ったり翻弄したりしたい! という悪側の気持ちが湧き上がりました。絶対楽しい描写になるでしょうこれ
  • もっと主人公とアリスとの関係性にも切り込んでいったほうがいいのかなと思います。感想交換会で話題になったバディものによくある関係の深め方についても、なるほどと思いました

 

榛見あきる『魔女っ子ミントちゃん☆オーバーライド!』

  • 毎回「こういう社会や経緯があって、だから今こういう技術がある」という設定の組み立てがうまいな、と思います。ドローンによって空中投影されたヒロインというのも絵面が魅力的でした
  • 反政府組織に襲撃だと勘違いさせないためには空中投影映像(と録音された音声)さえあれば良いような気がして、主人公がリスクを冒してまでリアルタイムでアテレコしなくてはならない理由がもうひとつ欲しいと思いました(当該シーン、めちゃめちゃかっこいいです)

 

よよ『ポポイの触覚』

  • 「ポポイは、ププイを嫌悪していた」の辺りでどきっとしましたが、ハッピーエンドで終わってよかった! と思いました。個人的には、実作で「泣いた赤鬼」を超えてほしい気持ちがあります
  • 一方で、ポポイもププイも寓話のために簡略化された存在にすぎないのではないか、という印象もあります。この生命体の生態に何かSF的なしかけがあれば……とも思いましたが、生命体の生々しい描写をきわめる方向でもいけそうな気がします
  • あと、これは本当に些細なことなんですが、触覚→触角では

 

式『贄とオロチと』

  • 最後の「自分が殺されるところをカザシに見せたくないから、カザシを殺す」というギミックが面白いです。よかったら11月に募集開始予定の第2回百合文芸小説コンテストにも応募を!(前回の規定は2万字以内でしたが……)
  • 「救う命を選別している」というタツミの指摘については、できたら実作のどこかで決着をつけてほしいなと思いました

 

岩森央『Ground Island』

  • 現実上で進行するゲーム『Ground Island』の一見アナログなところが面白いと思いました。裏では虫型カメラロボットや、他にもいろいろな技術がはたらいているのでしょう
  • 梗概では、琴が信じる強さが何なのかつかみとれませんでした。琴が生き延びられたのは、共に過ごした路上生活者たちのサポートがあったからのように感じました(『ヒナまつり』のアンズのようなイメージ)。幼少期に琴が得たものと『Ground Island』が子供たちに与えるものとがどうつながっているのかがポイントなのかなと思いました

 

大塚次郎『白銀のクリアテキスト』

  • かつてのインターネットと幽霊と暗号化技術の組み合わせが好きです。取り合わせが奇妙だと一文一文におかしみがでてきますね。アピール文の内容も面白く、ぜひ実作に組み込んでほしいと思いました
  • ただ、梗概では「そこで私は「幽霊」の助けを借りることにした」以降の理屈がちょっと分かりませんでした……すみません……

 

一色光輝『ムタビリスの庭』

  • ビジュアルの描写と時雨のセリフ回しがかっこいいです(梗概で書くには文字数制限がきついですが……)。この作品の空気・雰囲気がしっかり伝わりました
  • 自分が何者なのかを知るために時雨と共に庭を出る決意をする少年ですが、庭を出る前に少年の出自が判明してしまうので、庭から旅立つ新たなモチベーションが欲しいところです

 

武見倉森『ゲームマスタ』

  • 幾重にも重なった脱出ゲームという構造が面白かったです。逆方向への移動手段もバグ技っぽくて好きです
  • できれば、いま梗概で書かれている結末のもうちょっと先まで読みたいです……!

 

比佐国あおい『繭玉のたゆたい』

  • 今まで書いたことのない時代ものに挑戦するというチャレンジ精神、見習いたいです。課題の説明文にも「正しさ、強さの意味は時代とともに変わる」とありますし
  • 「鵺が大地を荒廃させたのは、人間の醜い生業をむき出しにさせることで人間をかげは蝶から守護するためだった」という動機が面白いのですが、それなら何故かげり郷の人々は鵺の努力の甲斐なくかげは蝶になってしまったのか、うまい理由付けがほしいなと思いました

 

村木言『遺された角』

  • マウリの境遇が好きです。マウリの側にも、自分が愛した(そして自分のせいで死んでしまった)女性の娘に真実を告げ贖罪したい気持ちと、愛する幼子の命を救うためにすべてを隠し通してでも薬を手に入れたい気持ちとの間で葛藤があったのではないかと想像しました
  • エーネが復讐を誓ってから翻意するまでのスパンがやや短いように感じられました。その間の出来事が「一角様から話を聞く」のみ、というのが原因かもしれません

第二十八回文学フリマ東京ありがとうございました

 一週間前になりますが、GW最終日、2019/5/6(月祝)の第二十八回文学フリマ東京にサークル『アナクロナイズド・スイミング』として出店してきました。お越しくださった皆様、ありがとうございました。

 

 前日深夜までずっと「サークルチケットと売る本とお金さえあれば大丈夫、サークルチケットと売る本とお金さえあれば……」と繰り返し唱えていたおかげで、当日はものの見事にそれら以外のすべてを忘れてきてしまいました。敷き布とか値札とかポスターとかポスター立てとか。べらぼうに焦りましたが、まあ、サークルチケットと売る本とお金さえあれば大丈夫でした。

 今回は会場がいつもと違い、東京流通センター第一展示場でした。全サークルがひとつのフロアに収まっているためか、これまで以上に活気に溢れていたような気がします。参加人数も過去最大だったとか。迷子のアナウンスが印象的でした。

 また、今回は初めて自分のサークル以外の合同誌に参加しまして、そういう意味でもいつもと違う文学フリマでした。そう、あの雨月物語SF合同です。午前中であっという間に完売したという、あの、伝説の……。すご……やば……。

 その雨月物語SF合同誌『雨は満ち月降り落つる夜』は、現在Kindle版が配信中です。 よかったらチェックしてみてください。

雨は満ち月降り落つる夜 (雨月物語SF合同)

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 弊サークル 『アナクロナイズド・スイミング』の本も、BOOTHで通販できるようにしてみました。購入にはPixivアカウントが必要ですが、遠方のかたでもしTwitterの告知見て興味持ってくださってたらのぞいてみてください。

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ではでは!